実はインド人はナンをあまり食べない?ナンって何なんだ?
2025/09/26 ※このサイトには広告が含まれます カテゴリー: カレー

日本のインド料理店では定番のナンですが、実はインドの一般家庭ではナンはあまり食べられていません。インドの人々が毎日食べているのはナンではなく、チャパティというパン料理です。
また、ナンやチャパティの他にも、インドには様々なパン料理があります。
この記事では、なぜインドではナンではなくチャパティが食べられているのかについて解説するとともに、ナンやチャパティ以外のパンの種類や、自宅で作れるレシピをご紹介します。
そもそもナンとは?
ナンは平焼きパンの一種で、インドカレーと一緒に食べることで広く知られています。小麦粉を主材料とし、発酵させた後、基本的には高温のタンドール窯の内側にはりつけて焼き上げるのが特徴です。
表面がパリッとしていて中身は気泡がたくさんあり、モチモチとした食感です。
ナンはインドが発祥と言われていますが、イランやパキスタン、アフガニスタンなどでも食べられています。
ナンはインドでいつから食べられているの?
インドカレーに欠かせないナン。実はその歴史は古く、約7000〜8000年前から食べられており、世界最古のパンの一つと言われています。
ペルシア(現在のイランあたり)からインドへと伝わり、様々な文化が融合して現在の形になりました。その後、メソポタミア、古代エジプト、インド亜大陸へと伝わり、様々な地域で独自のスパイスや調理法が加わって現在の形になりました。
インドでは、北インドの宮廷料理として発展し、タンドールと呼ばれる高温の窯で焼き上げるのが特徴です。しかし、タンドール窯を持つ家庭は少ないため、ナンは特別な日に食べる高級な食べ物とされています。
日本においては、インドカレーの普及とともに、ナンも広く知られるようになりました。手軽に本格的なナンが食べられるお店が増え、家庭でも簡単に作れるレシピも多数存在します。
ナンの起源
ナンの起源は、紀元前数千年のペルシャ料理だと考えられています。
当初は、小麦粉と水で作られた平たいパンだったと考えられていますが、その後、メソポタミアや古代エジプトへと伝わる中で、材料も複雑になり、様々なカレーや煮込み料理と相性の良いものになっていきました。
インド亜大陸に伝わるにつれて、タンドールと呼ばれる高温の窯で焼き上げるという、独特の製法が確立されました。タンドールの高温で焼き上げることで、ナン特有の香ばしい風味と、外はカリッと中はふっくらとした食感が生まれます。

インドの人々にとってナンは特別な料理
「インド料理と言えばナンとカレー」のイメージが強いですが、インドの人々が毎日家庭で食べているのは、実はナンではなく「チャパティ」と呼ばれるパンです。
ナンを作るにはタンドール窯が必要でコストがかかり、原料である小麦粉もインド人にとっては高級なため、なかなか家庭では食べられません。そのため、ナンはレストランなどで食べる特別な料理という位置づけです。
ナンとチャパティ、何が違うの?
インドで主に食べられているチャパティとは、どのようなパンなのか気になりますよね。

ナンとチャパティにはどのような違いがあるのか、下記の表にまとめました。
項目 | ナン | チャパティ |
---|---|---|
焼き方 | 高温の窯で焼き上げる 外はカリカリ、中はもちもち |
フライパンで焼く 薄くてパリッとした食感 |
材料 | 小麦粉、ヨーグルト、バターなど | 全粒粉、水、塩 |
食べるタイミング | レストランや特別な日 | 毎日 |
発酵 | あり | なし |
チャパティは、古くからインドで食べられてきた伝統的な食べ物。家庭の味として、人々の心に深く根付いています。作り方も全粒粉に水と塩を混ぜてこねて焼くだけ。しかも、低カロリーで食物繊維も豊富です。
南インドではパンではなくお米が主食として食べられている
インドではすべての地域でナンやチャパティが主食として食べられているわけではありません。地域によっては、米が主食の地域もあります。
ナンやチャパティなどのパンは主に北インドで食べられており、南インドでは小麦があまり取れないことから、お米が主食として食べられています。

北インドと南インドの食材や調理法の違いについて、下記の表にまとめました。
項目 | 北インド | 南インド |
---|---|---|
主食 | 小麦を使ったパン(ナン、チャパティなど)が主流。タンドールで焼かれた料理が特徴。 | 米が主食。バスマティライスなどの長粒米を使用し、パラリとした食感が特徴。 |
スパイス | ガラムマサラなどの複合スパイスを多用し、香り高くコクのある味わい。 | ココナッツミルク、マスタードシード、カレーリーフを使い、さっぱりとした味わい。 |
その他 | 肉料理や乳製品が多い。 | 野菜料理や米粉を使った発酵食品が多い。 |
日本でのナンの歴史
日本におけるナンの歴史は、1960年代後半から70年代に本格的なインド料理店が登場した頃から始まります。
当初は、伝統的な土製のタンドール窯で焼かれていたため、一度に焼ける量やサイズに制限がありました。しかし、日本の技術力によって大容量のタンドール窯が開発され、ナンのサイズが大きくなり、様々な形が登場するようになりました。
また、日本の食文化に合わせて、プレーンなインドのナンとは異なり、チーズやガーリックなどのトッピングが加えられ、多様な味が楽しめるようになりました。特にチーズナンやガーリックナンは、日本人の好みに合い、人気を集めています。
日本人がナンを愛する理由は、その多様な味とモチモチとした食感、そしてカレーとの相性の良さにあると言えるでしょう。さらに、大きなナンがテーブルに運ばれてくる様子は、食事を華やかに演出してくれるという視覚的な魅力も人気の理由の一つです。手軽に購入できるようになったことも、ナンの普及を後押ししています。
インドで食べられるナンやチャパティ以外のパンの種類
主に北インドで食べられているパンは、地域や文化によって多種多様で、それぞれに特徴があります。一般的に知られているナン以外にも、様々な種類のパンがインドの食卓を彩っています。
ここでは、インドで食べられているナンやチャパティ以外のパンの種類をご紹介します。
パラタ (Paratha)
チャパティの生地をのばして何層にも重ね、薄くのばして焼いたパンです。バターやギー(タンパク質などの不純物を取り除いた溶かしバター)を塗って焼き上げることで、外はカリッ、中はふっくらとした食感に。具材を挟んで楽しむこともできます。

プーリー(Puri)
全粒粉の生地を薄く円形にのばし、油で揚げた「揚げパン」です。揚げたてのサクサク感がたまらないプーリー。様々なカレーや野菜料理との組み合わせを楽しめます。

ドーサ (Dosa)
南インド料理の代表格、ドーサ。米と豆を発酵させた生地で作るクレープのようなパンです。南インドでは、朝食としてよく食べられています。サンバルやチャトニーと一緒にどうぞ。

バトゥラ (Bhatura)
ナンの生地を油で揚げたものがバトゥラです。プーリーよりも厚みのある揚げパン。チャナマサラとの組み合わせが人気です。

シールマール (Sheermal)
シールマールはインド北部やイランなどで食べられている甘味のあるナン。砂糖やサフランやカルダモン、温めた牛乳を使用するので、風味豊かです。甘いパンが好きな方におすすめ。

クルチャ(Kulcha)
ナンの生地にチーズやポテトなどの具材を包み、丸く平らにして焼いたものです。カレーなどと一緒に食べられています。
北インドで主に食べられていて、本場ではタンドール窯で焼き上げます。
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本場インドのナンの作り方
本場インドでは、どのようにしてナンが作られているのか気になりますよね。

ここでは、本場インドでの一般的なナンの作り方をご紹介します。
①小麦粉に水と塩を混ぜたあと、重曹、ベーキングパウダーなどの膨張剤をくわえる。さらにヨーグルトや牛乳などを好みで混ぜ込んで生地が完成。
② 生地を常温の場所で数時間置き、自然発酵させる。
③ 寝かせた生地を平たい円形に整え、タンドール窯の内側にはり付けて、数十秒ほど焼く。
タンドール窯は火力が強いため、短い時間でもこんがりと焼き上がります。
また、日本で知られているナンはしずくの形のような独特の形状をしていますが、本場のインドでは一般的には円形状に作られています。
本格的なナンを自宅でも作れる!作り方とコツを紹介
本格的なナンは、実は自宅でも作れます。タンドール窯を使わずに作れるナンの作り方をご紹介します。
必要な材料は下記のとおりです。
- 中力粉(または強力粉):200g
- 塩:小さじ1/2
- 砂糖:小さじ1
- ドライイースト:小さじ1
- 温水:80ml(約40度)
- ギー(またはバター):大さじ1
- プレーンヨーグルト:大さじ2
- 牛乳(または水):大さじ2
- サラダ油:少々(焼く用)
【ナンの作り方の手順】
- イーストを活性化する
- 小さなボウルに温水、砂糖、ドライイーストを入れ、軽く混ぜ合わせます。
- ふんわりとラップをかけ、5〜10分ほど暖かい場所に置いてください。
- 表面に泡が出てきたら、イーストが活性化しています。
- 生地をこねる
- 大きめのボウルに中力粉と塩を入れて混ぜ合わせます。
- 1で作ったイースト液、ギー、ヨーグルト、牛乳を加え、ゴムベラで切るように混ぜます。
- 生地がまとまってきたら、ボウルから出して台の上に移し、手でこね始めます。
- 生地がなめらかになり、耳たぶくらいの柔らかさになるまで、5〜7分ほどこねます。
- 一次発酵
- こね上がった生地を丸めて、ボウルに戻します。
- ラップをかけ、暖かい場所で1時間〜1時間半ほど発酵させます。
- 生地が2倍ほどの大きさになればOKです。
- 二次発酵
- 発酵が終わった生地を軽く押してガス抜きをし、2等分にします。
- 分けた生地を丸め、再び15分ほど休ませます(二次発酵)。
- 成形
- 休ませた生地を麺棒で薄く伸ばします。
- 厚みが均一になるように、中央が少し厚くなるように意識しながら伸ばしましょう。
- 焼く
- フライパンにサラダ油をひき、中火で熱します。
- 生地をフライパンにのせ、蓋をして弱火で2〜3分焼きます。
- 片面が焼けたら裏返し、同様に2〜3分焼きます。
- 焼きあがったら、バターやギーを塗って完成です。
ナンを美味しく作るためのコツ
自宅でナンを作るときには、下記のポイントを意識してください
・こね方: 生地はしっかりとこねることで、グルテンが形成され、もちもちとした食感になります。
・発酵温度: 発酵温度は、25〜30℃が理想です。
・焼き時間: 火加減や生地の厚さによって焼き時間は異なります。焦げないように様子を見ながら焼いてください。
・タンドール窯の代用: フライパン以外にも、オーブンや魚焼きグリルでも焼けます。
今回ご紹介したレシピを参考に、ぜひ自宅で美味しいナンを作ってみてください。
インドの家庭で食べられているチャパティの作り方
インドの一般家庭では、ナンよりも手軽に作りやすいチャパティが食べられています。
チャパティは直径12cm程度の円形で、薄いクレープのような形状をしています。軽い焼き上がりとふんわりした食感が特徴です。
チャパティは全粒粉(アタと呼ばれています)を使用して作ります。必要な材料は、一般的には全粒粉と水、塩のみです。

インド本場での一般的な作り方の手順は下記のとおりです。
①全粒粉に塩と水を加えて手早くまぜ、生地をまとめてラップをかけ、30分ほど寝かせる
②生地を1個づつの大きさに分けて丸める。丸くした生地をめん棒で平らに伸ばす。
③フライパンに油を引かないで両面を焼く
タンドール窯がある場合は、ナンと同様にはりつけて焼きます。
チャパティを自宅でも作ってみよう
チャパティは自宅でも簡単に作ることができます。スーパーで手に入る食材で作ることができるので、ぜひ作ってみてください!
- 全粒粉・・・・・・・150g
- 塩・・・・・・・・・ひとつまみ
- オリーブオイル・・・大さじ1
- 水・・・・・・・・・100cc
【作り方の手順】
- ボウルに全粒粉、塩、オリーブオイルを入れ、少しずつ水を加えながら粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
【ポイント】水分量は全粒粉の状態や湿度によって異なるため、生地がひとまとまりになるまで少しずつ水を加えてください。 - 生地を板の上に出し、なめらかになるまで約15分こねます。
【ポイント】生地がなめらかになり、耳たぶのような弾力が出るまで、優しくこね続けてください。 - 湿らせた布巾をかけて、30分ほど寝かせる。
【ポイント】生地を寝かせると、伸びがよくなり、ふっくらします。 - 生地を6等分にして丸め、めん棒で直径15cmほどの円形に伸ばす。
【ポイント】厚みは均一にしていきましょう。 - フライパンに油をひかず、④を一枚ずつ入れていく。フライ返しで生地を優しく押さえながら、焦げ付かないようにゆっくりと動かし、両面を均一に焼いていく。表面に小さな気泡が出てきたら、弱火でじっくりと焼き、全体がふっくらと焼き色がつくまで焼いたら取り出す。これを繰り返し、合計6枚焼く。
【ポイント】1枚ずつ焼いていきましょう。上手にできると大きくなります。
ナンやチャパティのアレンジレシピ
次に、ナンやチャパティのアレンジレシピをご紹介します。「カレーにあわせる以外にも作ってみたい」という方はぜひ参考にしてみてください。
オーロラソースがくせになる「ナンドッグ」

材料(2個分)
- ナン・・・2枚
- ソーセージ(ロング)・・・2本
- レタス・・・1枚
- ミニトマト・・・2個
- サラダ油・・・適量
- マヨネーズ・・・大さじ1
- ケチャップ・・・大さじ2
- ウスターソース・・・小さじ1
手順
- レタスは千切りにし、ミニトマトは4等分にする。
- ボウルにマヨネーズ、ケチャップ、ウスターソースを入れて混ぜる。
- フライパンにサラダ油を入れ、ナンとソーセージを焼く。焼き色がつくまで中火で3分ほど焼く。
- ナンの上にレタス、ソーセージ、ミニトマトを盛り付け、ソースをかけて完成。
チャパティで作るトルティーヤ風(ローストビーフ)

- チャパティ・・・1枚
- サニーレタス・・・1枚
- マヨネーズ・・・適量
- ローストビーフ(細切れ)・・・3~5切れ
- ローストビーフソース・・・小さじ1/4
- アボカド(細切れ)・・・2切れ
- ミニトマト・・・1個
- レッドキャベツスプラウト・・・5本
【作り方】
- チャパティを熱したフライパンで片面2分、ひっくり返して1分焼く。
- 焼いたチャパティの上に、5〜10cm程度にちぎったサニーレタスをのせ、マヨネーズをかける。
- 2の上にローストビーフをのせ、ローストビーフソースをかける。
- 3の上にアボカドとミニトマト、レッドキャベツスプラウトをのせる。
- 4の両端を少し折り込んでから下からくるっと具を巻く。
- 5をアルミホイルで巻く。
- 両端をねじったら完成。
ナンに合うカレーは?
ナンは、生地の厚みがあるモチモチした部分と、膨らんでパリッとした部分が1枚で楽しめるのが魅力です。そんなナンに合うカレーを選ぶ際は、3つのポイントを押さえると良いでしょう。
- ナンによくからむ濃厚でとろみのあるカレー
- ナンの甘みが引き立つマイルドな味わいのカレー
- 具材が小さめの食べやすいカレー
上記3つのポイントを踏まえ、ナンと相性の良いカレーを紹介します。
濃厚マイルドな味わい!バターチキンカレー

コク深いルーはナンとの相性が抜群です。鶏肉にガラムマサラを効かせれば、スパイシーな味わいが楽しめます。
クリーミーなカレーがナンにマッチ!えびとココナッツのエスニックカレー

新鮮なえびのプリプリ感が楽しいシーフードカレーは、ココナッツミルクのコクが深みをプラス。甘くて柔らかいナンとの組み合わせは、まさに絶品です。
ウインナーで簡単カレー

ウインナーソーセージ、ミニトマト、ぶなしめじ、うずらの卵など、下ごしらえがほとんど不要な食材を用いたカレーは、手軽でありながら、深みのある味わいが特徴です。ナンとの組み合わせも絶妙です。
レンズ豆で作るダルカレー

食物繊維やたんぱく質が豊富なレンズ豆を使ったヘルシーなカレー。煮る時間も少なく、手軽においしく食べられます。レンズ豆とナンの甘みがスパイスの辛みと相性抜群です。
世界の家庭で食べられているパン料理
世界にはナンのように、家庭でよく食べられているパン料理があります。代表的なものを国別に紹介します。
国 | 料理名 | 写真 | 特徴 |
---|---|---|---|
中東アジア | ピタ |
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小麦粉、酵母、水、砂糖、塩で生地を作り、高温のオーブンで焼く。焼き上がりは中に空洞ができ、具を詰めて食べる。 |
西アジア | ラヴァシュ |
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小麦粉、塩、水、を混ぜ、平らに伸ばしてオーブンで焼く。乾燥させると長期保存できる。 |
メキシコ | トルティーヤ |
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とうもろこし粉や小麦粉を使いクレープ状にして作る。具材を包んで食べるタコスが有名。 |
イタリア | フォカッチャ |
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強力粉、砂糖、塩、ドライイースト、水、オリーブオイル等が材料。生地を伸ばし、指で凹みを作って、オーブンで焼き上げる。そのままで食べたり、肉や野菜などをはさんで、サンドイッチのように食べる。 |
イタリア | ピザ |
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小麦粉、塩、水、塩、ドライイーストをこね、発酵させた生地を薄く伸ばして、トマトやチーズ、野菜などを上にトッピングしてオーブンや窯で焼いたもの。 |
まとめ
日本では「インドカレー=ナン」というイメージがありますが、本場インドではナンはレストランなどで食べる高級な料理とされています。そのため、インドの一般家庭ではナンではなく、シンプルで素朴な味わいのチャパティが主食として食べられています。
ナンやチャパティは自宅でも作れるので、ぜひお家でチャレンジしてみてくださいね。