【山形・村山市】東沢バラ公園|色鮮やかなバラと“チョウザメ飼育”の知られざる歴史
2025/02/27 ※このサイトには広告が含まれます カテゴリー: 公園

山形県村山市の山あいに広がる東沢バラ公園は、約7ヘクタールの敷地に2万株ものバラが咲き誇る、日本有数のバラ園です。環境省の「かおり風景100選」にも選ばれ、毎年6月と9月にはバラまつりが開催され、国内外から多くの人が訪れます。
そんな華やかなバラ園ですが、実は約30年前、園内でチョウザメの試験飼育が行われていたことをご存じでしょうか。
現在はその面影こそ残っていませんが、知って訪れると東沢バラ公園の散策がより味わい深いものになるはずです。
今回は、東沢バラ公園の見どころとともに、知られざるチョウザメの歴史についてもご紹介します。
東沢バラ公園とは

東沢バラ公園は、山形県村山市の東沢地区に広がる市営の公園で、約7ヘクタール(東京ドーム1.5個分)の敷地に750種類・2万株ものバラが植えられています。園内を歩けば、色とりどりの花々と豊かな香りに包まれ、訪れる人を楽しませてくれます。
全国に数あるバラ園の中でも、東沢バラ公園は特別な存在です。環境省が選定する「かおり風景100選」に、バラ園として唯一認定されており、バラの香りを五感で堪能できる公園として高い評価を受けています。
例年6月と9月には「バラまつり」が開催され、園内を鮮やかに彩る満開のバラとともに、コンサートやイベント、地元グルメの出店などが行われ、多くの観光客でにぎわいます。春から秋にかけてはバラ以外にも、東沢ため池でのスワンボートや広い芝生の広場、子ども向け遊具などが楽しめ、家族連れやカップルにも人気のスポットです。
一方、冬は一面の雪に覆われるため園内の散策はできませんが、雪に眠るバラ園の景色もまた趣があり、四季を通じて異なる表情を見せてくれるのも魅力です。

かろうじて車道は除雪がされているので進むことができますが(東沢ため池の手前まで)、バラ園内の方には足を踏み入れることはできません。
東沢バラ公園への行き方
東沢バラ公園は、JR村山駅の東口を出て、正面の山に向かってまっすぐ進むとたどり着けます。
駅から徒歩でもアクセス可能ですが上り坂が続くので、レンタサイクル(冬季休業)やワンコインタクシー(500円)を利用するとより便利です。
車で訪れる場合は、敷地内に無料駐車場があるので安心。
観光やおでかけの途中に立ち寄りやすい立地にあり、バラの季節はもちろん、散策や休憩にもおすすめです。
なお、イベント開催時には営業時間が変更となる場合があります。お出かけの際は、事前に公式ホームページなどで最新情報をご確認ください。
スポット名 | 東沢バラ公園 |
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電話番号 | 村山市商工観光課:0237-55-2111 村山市観光物産協会:観光物産協会0237-53-1351 |
営業時間 | バラ交流館:平日10時00分~15時00分/土日祝:10時00分~16時00分 ※公園は16時以降も入園可能 |
定休日 | バラ交流館・売店:水曜日(バラまつり期間中は無休) ※11月から3月まで冬季休業 |
住 所 | 〒995-0023 山形県村山市楯岡東沢1番25号 |
アクセス | JR村山駅より車で5分、徒歩で32分 東北中央自動車道・村山ICから車で約10分 |
駐車場 | あり(無料) |
料金 | バラまつり期間以外は無料 バラまつり期間:大人600円/小中学生300円 |
公式HP・SNS | 東沢バラ公園 公式ホームページ |
実はユニークな歴史も
現在は全国屈指のバラの名所として知られる東沢バラ公園ですが、かつてここでは意外な取り組みが行われていました。
それが「チョウザメの飼育」です。
約30年前、村山市の特産品づくりを目指して、園内のため池などでチョウザメの試験飼育が始められました。
今ではその姿を目にすることはできませんが、当時の挑戦は地域の人々の記憶に残り、公園の歴史の一部となっています。
チョウザメとは?

みなさんはチョウザメを実際に見たことがありますか?
チョウザメは淡水から海水域にかけて生息する大型の淡水魚で、見た目がサメに似ていることから「サメ」と名づけられていますが、実際は硬骨魚類に属する魚で、サメ(軟骨魚類)とはまったく別の仲間です。
外見の特徴から「蝶のようなウロコを持つ鮫=チョウザメ」と呼ばれるようになったとされますが、性格は温厚で歯もなく、人を襲うことはありません。
その姿は3億年以上もほとんど変わっておらず、「生きた化石」とも呼ばれています。
平均的な体長は1〜3.5m、寿命は50〜60年ほど。中には150年生き、全長5mを超える個体も記録されているそうです。
さらに、チョウザメの卵は高級食材「キャビア」として知られ、世界三大珍味のひとつに数えられます。
東沢バラ公園で飼育されていたのは、「ベステル」という品種でした。
東沢バラ公園のどこにチョウザメがいたの?

東沢バラ公園は、村山市街地から山に向かって少し上った場所にあります。
公園の中心には広大な「東沢ため池」があり、周囲にはバラ園や遊歩道が整備されています。そんな自然豊かな空間の一角で、約30年前にチョウザメの試験飼育が行われていました。
主に飼育されていた場所は以下の3カ所です。
東沢ため池
公園内にある灌漑用の大きな池で、広さ6.5ヘクタール、水深は10mほど。底の水温は約16度と、チョウザメに適した環境とされました。
最盛期には200匹以上が放流され、チョウザメ飼育の中心となっていました。釣りは禁止され、外部からも大きな関心を集めていたそうです。
チョウザメ観察池
北入口ゲートの近くに設けられていた小さな池で、4m×9m、水深約90cmほど。ここでは50匹ほどが飼育され、訪れる人々が間近でチョウザメを観察できる場として人気がありました。現在は跡形も残っていません。
萬年池
「観察池」のさらに北側にある小さな池。メインの飼育場所ではありませんでしたが、予備的に数匹のチョウザメが放流されていたといわれています。
当時、公園を訪れた人の中には、まさかバラ園の隣でチョウザメが泳いでいるとは想像もしなかった方も多かったことでしょう。
チョウザメ飼育の始まりと終わり
村山市でチョウザメの飼育が始まったのは平成2年(1990年)のこと。きっかけは、市内の住民が自宅の池でチョウザメを飼っていたことにありました。「意外と難しくなく育てられるのでは?」という発想から、東沢バラ公園での本格的な試験飼育がスタートしました。
平成2年10月 | 東沢ため池に50匹を放流 |
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平成3年5月 | チョウザメ観察池が完成し、萬年池にも数匹を放流 |
平成4年5月 | 東沢ため池・観察池にそれぞれ50匹ずつを追加 |
平成6年6月 | ため池に250匹を放流 |
その後も放流は続き、平成10年頃までに合計で約800匹が飼育されました。
しかし、自然環境での飼育は簡単ではありませんでした。ため池は夏場に水不足になったり、水温の変化が激しかったりと、チョウザメにとって厳しい条件が重なります。徐々に数は減っていき、平成13年に東沢バラ公園のリニューアル工事が計画されると、「観察池」の存在は地図から消えました。
そして、平成14年のリニューアルオープンを機に、チョウザメの姿も完全に公園から姿を消すこととなったのです。
なぜチョウザメは消えたのか
東沢バラ公園でのチョウザメ飼育は、夢のある挑戦でしたが、自然のため池という環境は決して理想的ではありませんでした。
チョウザメは本来、きれいで流れのある淡水を好みます。ところが、ため池は水の循環が乏しく、夏には水不足や水質の悪化が起こりやすい環境です。加えて、寒暖差が大きい村山盆地の気候も、安定した水温を必要とするチョウザメには大きな負担となりました。
こうした条件が重なり、放流された数百匹のチョウザメも徐々に姿を消していきました。市としても当初はキャビア生産を視野に入れていたものの、実用化には至らず、いつの間にか「幻のプロジェクト」となってしまったのです。
チョウザメを味わえた「レイクタウン東沢」
東沢バラ公園のすぐ隣には、かつて温泉施設「レイクタウン東沢」がありました。
ここでは平成7年から、実際にチョウザメ料理を提供していたのです。
メニューはキャビアだけではなく、しゃぶしゃぶ・からあげ・鍋料理などバリエーション豊富。1万円のフルコースまで用意され、和洋中さまざまな調理方法で楽しむことができました。実際に食べた人からは「からあげはとても美味しかった」という声も残っています。
ただし、料理に使われていたのは岩手県から仕入れた養殖チョウザメ。東沢バラ公園で育った個体を食材とする計画は、ついに実現しませんでした。
その後、施設は閉鎖され、現在は跡地に老人ホームが建っています。

温泉もチョウザメ料理も姿を消しましたが、地元では今も「チョウザメが食べられた珍しい施設」として記憶に残っています。

余談ですが、当時はチョウザメのイメージキャラクターも存在していました。女の子の「チョッちゃん」と男の子の「メッくん」。
名前は市民公募で決まり、イベントやパンフレットで親しまれていたそうです。
マンガ『釣りキチ三平』にも登場

東沢ため池でのチョウザメ飼育は、地元だけでなく漫画の題材にもなりました。
矢口高雄氏の名作『釣りキチ三平 平成版(4)赤沢堤の主』(講談社)には、この東沢ため池とチョウザメをモデルにした物語が収録されています。
物語では、ため池に棲みついた巨大チョウザメを主人公・三平が釣り上げようと挑戦するストーリー。実際に存在した「東沢ため池のチョウザメ飼育」をベースにしているだけに、フィクションでありながら妙にリアリティが感じられます。
「今もどこかで生き残っているのでは?」と思わせるロマンがあり、地元でも話題になった一冊です。興味のある方はぜひ読んでみてください。
東沢バラ公園の楽しみ方

東沢バラ公園といえば、今では全国有数のバラ園として知られています。
約7ヘクタールの敷地に750種類・2万株ものバラが植えられており、毎年6月と9月には「バラまつり」が開催されます。園内は甘い香りに包まれ、ステージイベントやマルシェなども行われ、多くの観光客でにぎわいます。
また、東沢ため池では春から夏にかけてスワンボートが営業。池の上から眺めるバラ園や周囲の自然は格別です。
園内には、バラを使ったスイーツが味わえる「バラ交流館」もあり、バラアイスやバラパフェなどここでしか食べられないメニューが人気。さらに、広い芝生広場や遊具、滝などもあり、大人から子どもまで楽しめるスポットとなっています。
休憩スペースやベンチ、トイレ、自動販売機も整っているため、ピクニック気分で一日ゆったり過ごすことができます。
まとめ
東沢バラ公園は、かつて市の特産品を目指してチョウザメが飼育されていたというユニークな歴史を持ちながら、現在は全国有数のバラ園として多くの人々に親しまれています。
四季折々の自然を感じながら、6月と9月の「バラまつり」では園内が華やかに彩られ、バラにちなんだスイーツやグルメも楽しめます。池のスワンボートや広い芝生広場、子ども向けの遊具などもあり、家族連れにもおすすめです。
過去のチョウザメ飼育の記憶に思いを馳せつつ、現在の美しいバラ園を散策してみると、この場所ならではの歴史の奥深さを感じられるはずです。