【山形・庄内】亀の尾発祥の地「熊谷神社」|「神」となった熊谷三郎兵衛の生き様にふれる
2025/10/22 ※このサイトには広告が含まれます カテゴリー: 参拝

山形県庄内町の山間部深くにひっそりとたたずむ「熊谷神社」をご存じでしょうか?
むかしむかし、庄内地方で人々を悩み苦しみから救うために身を尽くした熊谷三郎兵衛という方が、死んでからなお「神」として村人から祀られたという素晴らしい由来のある神社です。この熊谷神社には、その三郎兵衛さんの姿を彫ったお地蔵様のような石像があります。その石像(御影像)に直接手で触れて祈願することで、その願いが叶うとされています。
今回は、そんな素晴らしいご利益がある「熊谷神社」に実際に訪れて感じた魅力をレポートします。
幻のお米「亀の尾」発祥の地「熊谷神社」とは?
熊谷神社は、山形県庄内町立谷沢地区の中村という集落にある神社です。出羽三山や善宝寺と並び、庄内地方の霊場として古くから厚い信仰を集めてきました。
御祭神として、江戸時代に人々の暮らしを支えた「熊谷三郎兵衛」が祀られています。地域の人々を救い導いたその徳を慕い、やがて神として祀られるようになったそうです。
また、熊谷神社は東北や北陸地方に広まった水稲品種「亀の尾」の発祥の地としても知られています。亀の尾は優れた酒米として知られている品種。
境内にはその由来を伝える記念碑が建てられており、本殿ではその好適酒米「亀の尾」を使った「御神酒」が販売されています。
宮司さんに伺ったところ、このお酒は地元米の「亀の尾」から多くのお酒を醸し出している「鯉川酒造」が製造したものだそうです。
幻のお米「亀の尾」ってなに?
「亀の尾(かめのお)」は、明治時代に山形県庄内町で米農家・阿部亀治氏によって育成された水稲品種です。
阿部亀治氏が熊谷神社に参詣した際、倒れずに実った三本の立派な稲穂がとまりその稲穂を持ち帰って試験的に栽培を続けたことで、新たな品種「亀の尾」が生まれたとされています。
当時は冷害や病害に強く、東北や北陸を中心に広く普及しました。亀の尾はコシヒカリやササニシキといった有名なお米のルーツにもなっており、日本の稲作史において大変重要な品種として知られています。
現在も「幻の米」と呼ばれ、酒造米としても注目されるなど、伝統を受け継ぎながら新たな形で息づいています。
【熊谷神社の御祭神】「神様」になった熊谷三郎兵衛ってどんな人?
熊谷神社の御祭神である「熊谷三郎兵衛」とは、どんな人物だったのか気になる方も多いのではないでしょうか?
熊谷三郎兵衛がなぜ熊谷神社の御祭神になったのか、熊谷神社のパンフレットの内容をもとにご紹介します。
江戸時代初期、軍学者・由井正雪に学んだ熊谷三郎兵衛は、「慶安の変」に際し世を救う志を抱いたものの、願いは果たせず、檜澤山へと身を寄せました。
彼は修行を重ねる一方で、村人や参拝者に学問や農業、狩猟、医術など幅広い知識を伝え、人々の生活を支えました。
その深い信仰心と苦行に耐える姿から彼は「聖者」と呼ばれ、その献身ぶりはやがて「生き神」として敬われるようになります。
晩年には仏門に入り禅を修め、死後は「我が逝きし後は我を神として崇めれば、一生の願望は成就するだろう」と遺言を残したと伝えられています。
彼の没後、村人はその言葉に従い神として祀り、多くの参拝者が病気平癒や商売繁盛、漁猟の豊漁などを願って訪れるようになりました。以来、その霊験を求める人々は途絶えることなく今日まで続いています。
人々を救いたいという思いが、死んでからもなお生き続けている御影像(おすがた)には、とても大きなパワーが宿っているように感じますね。
山間にひっそりと佇む|熊谷神社の参拝レポート
熊谷神社は庄内町にあり、山形県の観光案内でもあまり見かけない「知る人ぞ知る」神社です。
月山の麓にあり、みどり色濃く霊験あらたかで、まさにパワースポットといった境内です。
ここからは、熊谷神社の境内の様子や神主さんからお聞きしたことを写真とともにご紹介します。
ご縁のある人しかたどり着けない神社!?

熊谷神社は山形県の観光案内でも見たことが無く、県内の神社仏閣巡りをしている私ですらその存在を知らず、家族にすすめられたのがきっかけで訪問してみました。
到着してみると、熊谷神社には大型バスも停められるほどの大きな駐車場があり、駐車場にあった看板を見るとご祈祷もしていただけるようです。
ご祈祷は午前3回、午後5回と書いてあります。無人の神社を想像していたのですが、駐車場の広さから見て、かなりの参拝者が訪れるようです。
なにか人々を惹きつけるすごい神社なのかも知れないと、ワクワクしてきました。
駐車場から参道に入るところにある鳥居にはお花が植えられていて、参拝者を快くお迎えしてくれているようでした。

鳥居をくぐり、いざ出発です。
参道はまさに「御神域」という感じで、マイナスイオンが降りそそぎ、歩いているだけで祓われていく感じです。
あまりにも清々しくて、何度も深呼吸しました。
道は緩やかに上り坂になっていて、少し歩かなければいけませんが、途中にトイレもあります。

しばらく歩いていくと、何か古い建物が見えてきました。どうやら建物の裏側のようです。
気になって建物の前に回り込むと、歴史を感じさせるおもむき深い神社がたたずんでいました。
ここが熊谷神社でした。

熊谷神社は参道を登ってくると本殿の裏側に着きます。つまり、参道に背を向け、山を向いて建っている神社なのです。
初めて行った方は「変な向きになってるな」とは思うかも知れませんね。
後から神主さんに伺ったのですが、参道に背を向けているという事は神社が見つけにくく、それ故ご縁のある方しか神社にたどり着けない(参拝出来ない)と言われているそうです。
確かに、私もあの森の中の参道を歩いていて「本当に神社があるのか」と不安になったので「ここにたどり着けた人だけがご縁をいただける神社」と言われていることに、自然と納得してしまいました。

また、本殿が向いている山の方向に小さな滝があります。
そこには御瀧神社として、不動明王がいらっしゃるそうです。
先ほどの駐車場にある看板には「御瀧神社・熊谷神社」と表記されてましたね。

本殿が向いている山の方から撮ったものです。
何の草か分かりませんが、緑色の絨毯のようでした。
本当に清々しいです。
「一生の願望はかならず成就する」|熊谷三郎兵衛さんの御影像と対面
神主さんに最初に本殿でご縁をいただいた事の感謝をお伝えし、お参りをしました。
その後、とても気持ちの良い境内(と言っても森の中って感じ)を散策していたら、神主さんから、「中に入ってお参り出来ますよ」とお声をかけていただきました。
おそるおそる本殿に入ると、中は古い「村の鎮守様」といった雰囲気です。

まず本殿の御鏡にお参りして、ふと左手を見ると、奥に大きな石のお地蔵様がいらっしゃいました。「神社の中に仏様枠のお地蔵さん?なぜ?」と首をかしげていたら、神主さんが丁寧に教えてくれました。
この石像は、お地蔵さんではなく「神様になった熊谷三郎兵衛さんの御影像(おすがた)」なんだそうです。
言われは先述したとおりですが、三郎兵衛さん自身が、自分の姿を石に刻んだとのこと。そして、自分が亡くなった後はこの像を祈ることで一生の願望は成就する、つまり「死んでからも村人を救っていく」と遺言したのですね。
しかも、自分で彫ったこの像は神社本殿の真ん中ではなく、脇に置きなさいと言ったそうです。
三郎兵衛さんはなんて謙虚な人だったのでしょう。そして、村人も遺言どおり長い間、ずっとこのように大切に守り崇拝してきたのですね。
人の想いと時間の長さを考えると、感動で胸が熱くなりました。
タオルがお守り?神主さんから願掛けのやり方を教わる
もう一つ、神主さんから大事な事をお聞きしました。
願掛けのやり方です。
この御影像の写真をもう一度見ていただくと、前にプラスチックケースがあって、タオルが山盛りになってますよね。
このタオルを一ついただき、治したい所があれば御影像のその箇所を直接撫でます。
そして、御影像にお願い事をします。
そのタオルはお守りとして持って帰ります。
(何度洗濯をしても、ご利益は消えないそうです)
そして次に参拝に来る時は、新品のタオル2つ(倍にして)お礼としてお返しします。
一つはお借りした(持って帰った)分、もう一つは次に来る参拝者の分。
そうすることで、新しいご縁が生まれ、たくさんの方が御利益をもらえる事になります。
ちなみに私は、肩凝りと目の疲労があるので、お借りしたタオルで御影像の肩と目を撫でさせていただきました。
直接御影像を触るのはとても緊張しました!
神主さんのお話だと、近頃では若い女性が「キレイになりたい!」と口紅を御影像の口に塗り、それを持って帰るのだそうです。
だからか、御影像の口がほんのり赤かったです。
神主さんはここに書ききれないぐらいの色々なお話をしてくださいました。
神主さんとお話しなければ、この御影像への願掛けの事も知らずに帰ってしまったと思います。参拝に行かれる方は、ぜひ神主さんにお声をかけてみてくださいね。
熊谷神社へのアクセスとご祈祷時間

熊谷神社は、新庄市と酒田市を結ぶ国道47号線を立谷沢川方面に曲がり、県道45号線の約8㎞のところにあります。
また、出羽三山神社のある羽黒山の方からも、県道45号線で行くことも出来ます。どちらにしても、下のパンフレットにあるように大きな看板が目印です。
冬季(1月6日から3月31日まで)は本殿がすっぽり雪に埋まるので、参拝できないそうです。
積雪の量によって変更があると思いますので、参拝可能かどうかは宮司さんにお問い合わせください。
スポット名 | 熊谷神社 |
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電話番号 | 0234-59-2204 (宮司宅:0234-59-2525) |
営業時間 | – |
定休日 | – |
住 所 | 〒999-6607 山形県東田川郡庄内町肝煎丑ノ沢71 |
アクセス | 新庄酒田道路「新庄IC」から車で約40分、山形自動車道「鶴岡IC」から車で48分 |
駐車場 | あり |
公式HP・SNS | 熊谷神社 公式ホームページ |
まとめ
熊谷神社は、人々への献身ぶりにより「聖者」と呼ばれた「熊谷三郎兵衛」が御祭神となった神社です。
身体の不調や悩みがある方は、願掛けにオススメ(県内一かも知れません)です。
また、親切な神主さんとお話ししたり、月山の麓の霊験あらたかなご神気を浴びるだけでも心や身体が癒やされます。
庄内方面に行かれる方は、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。